7月
ようこそ!フシギな水中水族館へ!
友達と大好きな水族館に遊びに来た!
可愛くてカラフルなお魚さんたちを見るといつだって心が弾む。
「見て!ペンギン!」
「可愛いね~っ!」
幼い頃から、私は水槽の中で自由に泳ぐお魚さん達に憧れていた。
「私も水の中を自由に泳いでみたいなぁ」
その時、ふと感じた視線。
ガラス越しに、一匹のペンギンと目が合う。
まるで私に語りかけるみたいな、まん丸な瞳。
じーっと見つめていると、私の右手が勝手に動いて…
私の手が……水槽に吸い込まれている?
「あれ?あれれ??」
そのペンギンは私の手を取ると__グイッ!
「わっ!」
勢いよく引っ張った。
「ようこそ!フシギな水中水族館へ!」
ペンギンが…喋った?
くちばしから出た泡が、ぷくぷくと上へ上がっていく……
ここ、水の中!?
「はっ!息!」
私はとっさに手で口を抑える。
「ご安心を!ここはフシギな水族館ですから、どんな生き物でも呼吸が出来るんです!
私、ガイドを務めるイワトビペンギンでございます!」
「ペンギンがガイドさん!?」
ピシッと制服を着た喋るペンギンに、私の周りを泳ぎ回るヘンテコな魚たち…
気がつくと、私はフシギな水族館に迷い込んでいた!
「なんか…すごくワクワクする…!」
「好きな生き物は何ですか? ご案内しますよ!」
「好きな生き物…」
「俺だろ?」
その声に振り返ると、私の大好きなメンダコがふよふよと浮いている。
「お前は俺のファンなんだな。愛は伝わったぜ」
「わーっ!メンダコも喋った!」
お魚さんはみんなフシギな姿をしているけれど、なんだか見覚えがある。
「ここは貴方の思い描いたフシギな海の生き物で溢れています!貴方のご来場を、みんな楽しみにしていたんですよ!
さあ、ご覧ください!」
「わぁ…!!!」
ヒレが炎みたいにゆれるお魚さんに、チョコミント色のながーーいウミヘビ、眠そうなチョウチンアンコウ……
へんてこりんでカラフルな生き物がいーっぱい!!
「ペンギンさん!あれは何?」
「奥で泳いでいるのは、フロシキガメです!
そして、上に見えますのは、ロボットジンベエザメの遊覧船です。
そしてあちらは…」
たくさんの生き物たちと、冷たくて気持ちのいい水の中を泳ぐ。
水の中で呼吸が出来るってフシギ!体も軽くて、まるでお魚さんになったみたい!
「ねえペンギンさん!次は…」
「ね~もう行くよ~?」
「はっ!」
ガラスの向こうでペンギンが泳いでいる。
だんだん聞こえ始めた、水槽を眺める人たちの楽しそうな笑い声。
「も~っ!いつまで見てるの~!?」
「ごめーん!今行く!」
とってもフシギな水中水族館。
私は振り返って、あのペンギンさんにウインクした。
「また連れてってね、ペンギンさん」