8月
旧友と再会した日
チカチカと点滅するネオンの中を足早に駆け抜ける。
俺は、『あいつら』のことを思い出していた。
青春時代の切っても切れねぇ大切な仲間。
あいつらは、俺は。どんな大人になったのか。久しぶりに会う仲間たちを見て何を思うのか―
『せーのっ、カンパーイッ!!!!!』
今日は、その答えがわかる日だ。
「うおーっ!お前ら久しぶりだなーっ!」
5人の中で一番ガタイの良い岳に豪快に笑いながら肩を叩かれる。
「岳!お前デカくなったな!どうしたらこうなるんだ? 」
「ガッハッハ!毎日力仕事だからな!木材も石膏も軽いってもんだ!」
「でもまさか、雅人と龍太郎が2人でバイク屋をやってたなんてね」
昔と変わらない派手な金髪の、この店のマスターの優弦(ゆづる)が微笑ましそうに俺らを見る。
「へへっ!なんでも直せる最強のバイク屋だぜ?」
俺は胸を張って誇らしげに言う龍太郎の肩を小突いた。
久しぶりに顔を合わせた旧友たちは、みんな曇りのない晴れやかな顔をしていた。
俺はニヤリと笑いながら、一番この場に似合わないスーツ姿のインテリ風の男を見た。
「いやぁ…血の気の多かった圭介が、まさか弁護士とは」
「あぁ!?……チッ。」
「ほら、この写真見ろよ!めっちゃヤンチャ!」
圭介が龍太郎にヘッドロックをする。
やっぱり、圭介の血の気は相変わらずらしい。
「やめろっ!それはお前もだろ!」
「はぁ!?俺は圭介たちが卒業したあとは大人しくしてたし〜」
あの頃は毎日こいつらとこんなことしてたな―
昔からバイクが好きでそこら中を乗り回していた俺たちは、自然と柄の悪いやつらに目をつけられることが多かった。
みんな売られた喧嘩は買っちまう奴らばっかりで、いつも傷が絶えなかった。
そんなやつらが大人になって、上手くやれてるのか。正直気がかりだったが―
「…元気そうでよかったぜ」
俺のさりげない一言に4人全員が食いつく。
「……うん?」
「おいおい!雅人が言えることかよ!」
「は?なんでだよ」
「お前は昔から自分のことより他人優先だからな」
「また何か面倒ごとに巻き込まれてないかって、俺たち心配してたんだよ?」
「俺がいるから大丈夫だって!」
「おっと、面倒ごとがここに……」
「なんだと!?」
「……ははっ!いらねえ心配してんじゃねーよ!」
昔から誰よりも……よっぽど俺なんかより、俺のことをわかってるやつら。
今日まで、それぞれが別々の道を歩んできた。こいつらとの青春も、どこか昔に置いてきたような気がしていた。―だが。
「なぁ、この美味い酒が抜けたら……久しぶりにひとっ走り行こうぜ」
「おっ!いいな!」
「賛成!」
どれだけ時間が経っても、こいつらと会えば変わらないあの頃に戻れるんだ。