2月
私たちがデビューした日

身体がふつふつと湧くような、熱く込み上げる感覚。
汗ばむくらいの照明が、眩く私たちを照らし
みんなの手拍子が、心臓に響いてくる……。

私たちは会場の熱気を肌で感じながら、開演前に円陣を組む。
肩に回るみんなの腕の温度が熱く、緊張が身体中から伝わってくる。
夢にまで見た、この瞬間。
ピンク色の衣装を身に纏った私は、あの日を思い出していた。

「……ねぇ、覚えてる? 私たちがアイドルを目指した日のこと」

…………

小学生の頃、学校帰りに集まる公園の茶色いベンチが、アイドルに憧れる私たちにとっての小さなステージだった。

「次はうちがアイドルだってば!」
「やだやだ!はなして!」

あの日は、千秋と澪のケンカがなかなか止まらなかったんだっけ。

そのうち2人の間で穂乃香が泣き始めちゃって…。

「うわぁ〜ん!ケンカしないで〜!」

こんな感じで、ベンチの上はいつも取り合い。
ただ、その日はいつも以上にケンカが長引いていて…怒った私はお腹からうんと大きな声を出した。

「もうっ!みんな座って!!」

驚いた表情でベンチにぎゅうぎゅうに座るみんな。
すると、誰からともなく自然と笑顔が溢れてくる。

「え〜!狭いよ〜」
「落ちそう!」
「えへへへ!」

「やっと笑った!も〜っ!みんな今日怒りすぎっ!!ここはみんなのステージなんだからねっ!……あ!そうだ!」

その時、私はとってもいいことをひらめいたんだ。

「みんなで一緒にステージに立てばいいんだよ!!」

「え?」
3人はポカーンとした顔で私を見てたっけ。
「4人一緒なら、きっと世界中の人たちを笑顔にできるよ!」

私が自信満々に言うと、3人がみるみるうちに笑顔になり、瞳をキラキラと輝かせた。

「わぁ!それって素敵!」
「いいなそれ!」
「楽しそう!!」
そして私は空に向かって手を伸ばしながらこう言ったんだ。
「4人で、世界中を笑顔でいっぱいにするアイドルになろう!」

…………

あの時の言葉は私たちの中で、次第に大きく膨らんで―いつしか、夢ではなくなっていた!

「ここまで来れたのはみんなのおかげ……!ほんっとうにありがとう!」

みんなの鼓動の音が聞こえてきそうなほどの緊張感の中、
夢を叶えるおそろいのミサンガが揺れ―

「……ばーかっ!」
「えっ!?」
「あの日希が言ってくれなかったら、うちら全員、きっとここにいなかった!」
「そうだよ!こちらこそ、私たちをアイドルにしてくれてありがとう!」
みんなはあの日のように瞳をキラキラ輝かせながら私に声をかけてくれる。

「希!やっちゃおう、あたしたちで!」
「……うん!」

自然と重なる4人の手。
1人1人の笑顔を見つめて、大きく息を吸い込んだ。

「世界を笑顔で満タンに!」
「いくぞーっ!」
「おーっ!!」

今日から、私たちの世界笑顔計画は始まるんだ!