1月
神様会議の日

正月。お買い得な福袋に年々増えるお年玉。おせちを食べてテレビを眺めたら、
初詣に行って今年の抱負を神様にお伝えする—それが正月。人間にとっては!

ところがどっこい。一年の計は元旦にあり!
初詣で人々の願いを聞き、一年の世を見届ける……正月でも働き続けるのが我々『神』というものだ。

しかし今日、私は大変焦っていた。目玉模様の布の中で冷や汗がだらだらと流れる。
何しろ元旦だというのに—世の中の出来事が、何一つ決まっていないのである!

「このままでは全く同じ一日が年末まで続いてしまう。今年は人々が成長でき、
人生の糧になるような一年にしたいのだが……。
どうか皆さまのご意見をお聞かせ願いたい」
「ウーム。こうしている間にも初詣のお願いが増えていますね」
「人間がいっぱい来てくれるの、うれしいなぁ」

会議の司会進行は目玉の私『金財天(きんざいてん)』。書記は同じく私と
、稲のような色をした蛙の『稲蛙様(いながまさま)』である。
せかせかと筆を取る小さい方の弟君と、これでもかと巻かれた巻物に新たな世情を記していくが……

「この紙カラフル…とても美味そう……」
「あぁっ!食べてはいけませぬ!」
「ウキキキ!太陽を浴びた麦焼酎はうまいなー!龍神よ!」
「全くじゃ!おせちもいい水をつこうとる!うまい!うまいぞ!」

酒に甘味に舟盛りまで。どんちゃん騒ぎで盛り上がるのは、日本の八百万の神々である。
縁もたけなわ、食事も喋りも止まらない。
一筋縄ではいかないのが、『神様会議』というものである。

「皆様!ことの重要さをわかっておいでか!?」
「ホッホ!焦らずとも良い!皆意見は持っておる!」

そう高らかに笑うのは、土地の平穏を司る大鯰神(オオナマズヌシ)。
それに続いて、他の神々も口を開き始める。

「まぁ、正直稲が豊作であれば…ケロ」
「シャーッ!子孫繁栄はどうだ?」
「子孫繁栄!子孫繁栄!」
「なんて美しいんだ……帽子をかぶったボク」
「にゃ〜ん!このかわいさに免じて、人間が猫をたくさん可愛がる一年がいい……にゃん?」
「ぶひひ!職権乱用だ〜」

このような会議、私たちを慕っている人々が見たらどう思うであろう。
世の中の運命を握っている限り、私たちは『神様』でなくてはならんのだ……!
「貴様ら!少しは神という自覚を……!!」
私がそう声を荒げたとき、

「けんか?」

地面を揺らすような恐ろしい声が響く。

「ヒッ!」
「けんかなの……?この福の神の前で……?」

ギギギギと首を向ければ、普段の穏やかな表情とはかけ離れた恐ろしい形相の福の神が、
その長髪をゆらめかせている。
私は手と首をめいっぱい振り、なんとか弁明する。

「まさか!とんでもない!」
「うふふ、そうよね♡」

神とは本当に厄介なものである。

「まぁまぁ!脳に糖分は必要ですぞ!」
「ぐうっ!それは私の大好物のみたらし団子……!
……ええい、ままよ!腹が減っては会議はできぬ!!」

飲めや歌えの大騒ぎ。今年はどんな年になるのか、全てはここから決まるのだ。
神様会議は、まだ始まったばかりである。